お客様の挑戦
スペインのヘタフェに拠点を置く Airbus Military 社 (前身は EADS CASA-MTAD) は、過去数十年にわたり、代表的な軍用機の設計、生産、試験に携わってきました。Airbus 社は、2003 年のプログラム承認後、 Airbus A400M 中型軍用輸送機の開発という注目度の高い次のプロジェクトに着手しました。
この輸送機はターボプロップを 4 台搭載し、相対的に機体は大きく、空中給油が可能な点が特徴です。A400M は、ドイツ、フランス、スペイン、イギリス、トルコ、ベルギー、ルクセンブルグ、マレーシアで 180 機の受注が決まっています。その開発プロセスにおいて、最初の実規模試験体がヘタフェで組み立てられ、同時にこの機体の周囲と内部を試験するための治具も構築されていました。目標は、翼がセビリアからヘタフェに到着してから 6 ヶ月後に試験の準備を完全に整えておくことでした。
「この機体の開発スケジュールに遅滞は許されませんでした」と Airbus Military 社構造物試験室長 Angel Gago 氏は述べました。「試験中は最高レベルの効率性を達成し、しかもプロセス全般にわたって供試体の構造的健全性も保持しなければなりませんでした。」
Airbus A400M の構造物試験では、 120 の制御チャンネルと、 6,000 のゲージを同時に読み取ることができる 9,000 以上の歪みゲージが求められます。また、航空機の実際の運用状況を再現するために、供試体に極めて大きな負荷をかける必要があります。Gago 氏は、セットアップではこのように高い複雑性と荷重が求められ、供試体の健全性を維持しなければならないため、試験システムの荷重負荷及び荷重除去を絶対的な精度で調整できる能力が必要であると考えていました。
「システムに障害が発生し供試体が損傷するようなことがあれば、数ヶ月におよぶ貴重なエンジニアリングの時間が失われてしまいます」と Gago 氏は言います。「そのような不具合が生じることは稀ですが、このようなリスクを冒すことはできませんでした。常に管理された方法で迅速かつ均一に、試験装置からエネルギーを逃がすことができることが不可欠でした。」(
MTS のソリューション
Airbus Military 社と MTS の関係が始まったのは、 20 年以上前のことです。「我々が最初に MTS との協業を開始したのは、1978 年のことでした。その 5 年後には MTS のおかげで、初めて試験を油圧サーボの閉ループへ移行することに成功しました」と Gago 氏は述べています。「現在、当社ではすべての航空機試験に AeroPro™ソフトウェアを使用していますが、統合された制御機能と データ収集機能により、すべての試験活動をリアルタイムで簡単に管理することができます。
「我々は、MTS がこの分野で先進技術を提供しているだけでなく、当社がすでに利用している AeroPro ソフトウェアと同一の インターフェースでその技術の管理ができることを発見して満足しています」と Gago 氏は付け加えました。「MTS が提供するすべてのアクチュエータ、制御装置、ソフトウェアを含む完全な試験ソリューションにより、我々はより迅速に前進することができました。」
MTS は、Airbus Military 社が Airbus A400M 航空機用に使用する各試験治具に ALA(能動負荷中断)システムを追加する際にサポートを提供しました。ALA 技術は、停電やシステムのインターロックが発生した場合、構造物試験システムのアンロードを厳密に制御することで供試体の保護に役立ちます。
そのような事例では、圧力やアクチュエータの位置が変化しても ALA システ ムは計測を行い、ソフトウェアとハードウェア双方のレベルであらゆるアクチュエータの負荷を正確かつ同時にニュートラルな状態にします。供試体に掛かっている油圧を下げる際に試験全体の状態を考慮しながら、荷重制御システムと並行して独立した制御システムが起動します。このシステムは、制御側の不具合を検出し、供試体全体から負荷が迅速かつ均等に除去されるように動作します。
「MTS は、ALA システムが完全に統合されて運用されるまで、あらゆる段階で当社と密接に協力してくれました」と Gago 氏は語ります。「今では、このシステムは試験ラボ全体で一貫して動作しており、AeroPro 環境でのサーボ制御やデータ収集と並行して管理しています。」
お客様のメリット
Gago 氏によると、MTS の ALA 技術の主な利点は、構造物試験で使用される供試体を、あらゆるシステムの不具合や予期せぬ挙動から保護する方法について、Airbus Military社に新しい考え方をもたらしたことです。
また、同氏は「当社は今、試験中の損傷から試験品がしっかりと守られていることを確信しています。」と述べました。「当社の試験エンジニアは、試験治具に予期せぬ不具合が生じ、それまでの努力が台無しになってしまう可能性を心配することなく、試験に集中することができます。」
Airbus Military 社の Jesus Posada 構造物試験担当主任氏によると、試験ラボが次の疲労試験段階に入る際にも MTS が参加することになるとのことです。「我々はすぐに疲労試験のスピードアップを図ることを考えています。この種の試験の改善に役立つ専門知識については、 MTS にサポートを求める予定です」と Posada 氏は言います。「動的試験を加速させるという AeroPro ソフトウェアツールの評判はよく耳にしていましたが、近い将来、それらを最大限に活用できることを期待しています。」
C