お客様の挑戦
バージニア州アルトンにある National Tire Research Center (NTRC) は、世界中の自動車メーカーやタイヤメーカーの研究開発を支援するために設計された、あらゆるスペクトルのタイヤ試験能力を提供しています。運営責任者である Jonathan Darab 氏によると、NTRC はメーカーが他では得られない試験装置や社内の専門知識を提供しています。そのため、この施設が今後のタイヤ試験やバーチャル車両の開発に大きな影響を与えることを彼は期待しています。
「これに最も近い例はバイアスからラジアルへの移行です」と Darab 氏は述べています。「タイヤ製造に使用した技術やタイヤ自体の性能の面で、まさに大きな飛躍でした。私たちはこの能力をそのように見ています」
このレベルに到達するために、NTRC はまだ存在していない試験装置を見つける必要がありました。具体的には、衝突を避けるために急ハンドルを切ってから反対方向に過剰にハンドル操作する二車線レーン変更を含め、より多様な運転条件や運転事例を再現できるシステムが必要でした。FMVSS (Federal Motor Vehicle Safety Standard) No.126 試験に合格するためには、横転の原因になることが多いこの動作を再現する必要があります。この基準により、2013 年までに重量が 10,000 ポンド未満のすべての自動車とトラックに電子制御式安定化制御システムの搭載が義務付けられました。
「今のところ、その 126 の手順をラボで正確に再現できるタイヤ試験システムはありません」と Darab 氏は述べました。「新設計が試験に合格するためには、自動車の製造委託会社やタイヤメーカーが、他の類似事例に基づいてデータを推定する必要があります。つまり、新しいモデルが合格するという 95% の自信ではなく、80% 程度の自信があるということです。」
MTS のソリューション
その 128 の手順のために、製造委託会社は特定の周波数レベルを避けるよう車両を調整する必要があるだけでなく、リソースを消耗する追加の物理試験を伴う、バーチャル開発の努力も拡大する必要があるという重要課題が生じました。ただし、車両が製造段階で FMVSS 126 試験に不合格となると多額の罰金が科されてブランドイメージの低下を招くため、OEM メーカーには選択の余地がありません。正にこれが NTRC が 126 手順を実行可能なタイヤ試験システムの開発に着手した理由です。
これにより NTRC は MTS と協力することになりました。30 年以上にわたり、MTS Flat-Trac® のタイヤ試験システムは平面力とモーメントの測定において業界をリードしてきました。この遺産があったため、自然に MTS が選ばれました。システム要件について NTRC と共に検討してから、MTS は独自の能力を持ち高度な仮想開発を提供するタイヤ試験システム、Flat-Trac LTRe を開発しました。
「機械の仕様は、126 手順を含め、自動車や小型トラックのタイヤが現実世界で遭遇するすべての運転手順を再現できるように選択されました」と Darab 氏は述べています。「そのため、とりわけスリップ角 90°/秒およびキャンバー角 38°/秒などにこだわりました。OEM 製品の 95% がこの機械で試験できるようにしたかったのです。」
Flat-Trac LTRe の最大の差別化要因は、電動永久磁石モーター、またはスピンドルトルクドライブです。このモーターは、3 つの応力方向すべてに最大 30,000 N の物理的負荷がかかった状態で、フルスピードで走行トルクと制動トルクをかけるために必要な高出力密度と超高性能帯域幅を実現しています。別の主な特色には、システムの速度全域および負荷範囲全体で車道ベルトをフラットに保つ特殊な水ベアリング、およびモータースポーツのコーナリングを再現するために最高時速 200 マイル (時速 320 キロ) で走行する第 2 の電気モーターが含まれます。
お客様のメリット
Flat-Trac LTRe のこれらの機能を使用して、自動車の製造委託会社やタイヤメーカーは、より幅広い設計のタイヤを物理的限界を超えて試験することができます。
「私たちはまったく新しいジャンルの試験を作っているのです」と NTRC の専務取締役である Frank Della Pia 氏は述べています。「NTRC と同等の設備は存在しません。NTRC が提供するすべての機能を合わせると、タイヤ技術に大きな飛躍をもたらすことになるでしょう。」
メーカーにとって重要なのは、Flat-Trac LTRe によって、制限のあるラボ環境では今まで達成不可能だった条件でのタイヤ試験が容易になることです。製造委託会社は新しい方法でタイヤ試験が可能になるだけでなく、ハイブリッドシミュレーション、またはハードウェアインザループ試験を用いて、他の構成部品やサブシステムとタイヤの相互作用を評価できるようになります。この場合 LTRe システムは完全な車両コンピュータモデルと連動して実行されます。バーチャル車両が手順を実行すると、LTRe システムはそれを実際のタイヤで再現します。次に、シミュレーションの精度を高めるためにタイヤの応答がモデルにフィードバックされます。
「製造委託会社の試験チームが NTRC に来るとき、車両全体を計測する代わりにタイヤ 1 本を試験できるようになります」と Darab 氏は語っています。「2 日間かけて誤差 20% の試験を行う代わりに、2 日間で何千ものシミュレーションを実行することができるようになります」
これまで、LTRe システムの導入は順調に進んでいます。Della Pia 氏は、LTRe の開発時に両チームがうまく連携したことが功を奏したと考えています。
「MTS と一緒に仕事をすることで、全員が同じチームであることを本当に実感しました」と Della Pia 氏は述べています。「そこでは皆、科学的方法を実行し、正しいことをしようとしていました。それは素晴らしい体験でした。」