顧客の挑戦
テキサス州フォートワースに本社を置くBell Helicopter 社は、業界をリードする航空機メーカーであり、ヘリコプターの商業認証を初めて取得した企業でもあります。Bell Helicopter は、80 年以上の歴史の中で、35,000 機以上の民間機および軍用機を納入してきました。世界的に信頼されているブランドであり、垂直離着陸機の大手プロバイダーでもあります。
Bell Helicopter 社は、競争が激しく規制の厳しい業界で一歩先を行くため、それぞれの新しい設計性能に相当な自信を持って、革新的な製品をできるだけ早く、コストを抑えて市場に投入する必要があります。そのため、正確な試験データは非常に貴重なリソースとなります。このことを最も熟知しているのは、完全に統合されたアビオニクスの操縦室と高度なフライ・バイ・ワイヤ飛行管制システム搭載の Bell 525 Relentless の主任試験エンジニアである Mark Southard 氏以外にいないでしょう。525 の試験プログラムの計画が始まってすぐに、機械システム試験研究所には床面積が十分で無いことが分かりました。
「当社のテスト施設では 525 Relentless に必要な試験治具の設置面積に対応できないことが、かなり早い段階で明らかになりました」と彼は言います。「徹底的に調査した結果、既存の格納庫をオーバーフロー試験施設に改造することが最良の選択であると判断しました。」
Southard 氏は、2014 年に建設を開始した新施設の管理者で、現在は Bell 505 ジェットレンジャー X の機体コンポーネント試験に従事しています。まもなく、この施設では 525 のコンポーネント試験と実物大の機体試験を開始し、その後まもなく525 ローターのコンポーネント試験を実施する予定です。しかし、ここに至るまでには大変な努力が必要でした。
「新しい試験プログラムに対応するよう、すべてが適切にセットアップされているか確認する非常に困難な年でした」と Southard 氏は語りました。「予算とスケジュールのリスク軽減方法のひとつとして、信頼性の高いインフラがあります。我々は、製品の認証や検証をサポートする正確なデータを提供するために、信頼できる試験装置を必要としていました。」
MTS のソリューション
この新しい施設は、同社のフォートワースキャンパスの 20,000 平方フィートのスペースを占めています。現在、6 人のエンジニアと 5 人の技術者が、新しい試験ラボでのアクティブテストと今後のテストに割り当てられています。現在、格納庫では 5 フィート × 14 フィートから 20 フィート × 50 フィートまでの 12 台の独立した試験機の導入が予定されています。
「新しい設備を設計する際には、信頼性の高い油圧機器とテスト制御の 2 つが最優先事項でした」と Southard 氏は言います。「それを MTS が提示してくれたのです。当社は、非常に優れた管理能力を持つ MTS のアクチュエータを使用して、不良データのリスクを減らしています。精度は完璧なものになるでしょう。」
新しい施設では、4 台の MTS SilentFlo™ 505 油圧装置が並列接続されており、3,000 psi で最大 600 gpm の出力が可能です。525 の実物大機体の疲労供試体(FTA)試験機には MTS 201 アクチュエータが組み込まれており、負荷条件の適用、反応、バランスを実現しています。試験エンジニアは、アクチュエータの制御とデータの取得に、MTS FlexTest 200 デジタル制御装置、MTS AeroPro™ ソフトウェア、MTS FlexDac データ収集ハードウェアを使用しています。
「当社の試験結果の多くは設計者にフィードバックされ、潜在的な問題を早期に発見し、作業の方向性を修正するのに役立ちます」と Southard 氏は言います。「機械試験を実施しないと、実際何があるか分かりません。当社が行う試験は、製品がお客様にとって安全で信頼できるものであることを保証するものです。」
顧客のメリット
新しい施設で実施する試験は、Bell Helicopter 社が 525 の FAA 認証および 505 の TCCA(カナダ運輸省民間航空局)の認証を取得するために必要な構造データを提供します。具体的には、飛行中や地上での様々な負荷を想定して、機体やローターコンポーネントの構造的な健全性や耐久性を実証します。同社は、これらの極めて重要な試験において、優れた信頼性のある性能を確保するために、MTS のソリューションを選択しました。
例えば、試験システムでは、1 つのコンポーネントに対して 6,000 万回のサイクルを簡単に蓄積することができます。その後、別の試験を行うためにアクチュエーターを再設定する、ということを繰り返します。従来、Bell Helicopter 社では、これらの用途に工業用の 油圧シリンダーを使用していました。しかし、高圧側と低圧側のシールからのオイル漏れが頻繁に発生し、問題となっていました。精密なサーボ弁制御で動作するシングルエンドの丈夫な MTS アクチュエータは、簡単に選択できました。
「MTS のアクチュエータは、そのメンテナンス不要の性能により、大成功を収めました」と Southard 氏は述べています。「525 FTA のアプリケーションには、今後の機体試験で再利用することを想定して、高品質な性能を持つ MTS モデル 201 アクチュエータを選択しました。
性能が実証されたことで、MTS FlexTest デジタル制御も採用されました。Bell Helicopter 社の試験ラボでは独自の試験ソフトウェアとハードウェアを使用していますが、こうしたツールでは、機体の疲労試験に必要な制御チャンネル数に容易に適応することができませんでした。より良い解決策を見つけるために、Southard 氏のチームは複数の試験施設のエンジニアと話をしました。セスナの試験ラボから、FlexTest 200 の信頼性と安定性についてのフィードバックがあり、最終的な決定が下されました。
MTS FlexDAC が選ばれたのは、プログラムの試験データを取得する方法を変更することができるからです。歴史的に見て、飛行試験や疲労試験に使用していた計測器は、ひずみゲージの下流にあるブリッジ補完回路を備えたフルブリッジゲージでした。MTS FlexDAC 装置にはブリッジ補完回路が内蔵されており、初めて供試体をクォーター・ブリッジ・チャンネルとして計測することができました。
「MTS FlexDAC で時間と材料費を大幅に削減できました」と Southard 氏は語ります。
また Bell Helicopter 社は、MTS が独自の要求に対応してくれたことも評価しています。MTS SilentFlo HPU を導入するにあたり、Southard 氏のチームは、同社の環境衛生と安全に関する要件に準拠するため、いくつかの変更を加える必要がありました。特に、MTS のマルチポンプ制御マネージャ (MPCM)を施設の火災警報システムと統合する機能が必要でした。
「MTS の協力により、火災報知器が作動した際のシャットダウン保護のために、MPCM とのインターフェイスが可能になりました」とSouthard 氏は語ります。「さらに、4 つの HPU をつなぐ共通配管の仕切り弁に電動アクチュエータを追加することができたので、流出物の封じ込めに必要なサイズに縮小することができ、ラボの床面積をさらに節約することができました。」