お客様の挑戦
ウィチタ州立大学の National Institute for Aviation Research (NIAR) は米国最大の大学の航空研究開発機関です。4 つの拠点に 32 万平方フィートの敷地を有し、10 以上の研究所があり、一般機、商用機、軍用機の技術開発を行っています。
「顧客が NIAR を選ぶ理由は、経験豊富な人材と最先端の設備があるからです」と NIAR のテクニカルディレクターであり、航空機の耐空性と持続性に関する研究プログラム分野の第一線の科学者である Waruna Seneviratne 博士は語っています。「私たちは様々な分野の経験を持っています。材料の選定や許容試験から、本格的な認証試験や分解検査に至る、あらゆる相談に応じます。充実したサポート体制が整っています。」
NIAR ではその専門知識を活かして航空宇宙分野の最も困難な問題の一部を解決しています。その一つは、第一世代の複合材部品が耐用年数を迎えた今、どれだけ長持ちするかということです。複合材構造の破壊力学では、金属製部品のように何十年にもわたって蓄積された運用データや研究成果がないため、意味のある知見が得られません。そのため、複合材構造の延命化の追求に既存の方法論で対応することができません。典型例は、F/A-18 ホーネットです。
「F/A-18 は 1970 年代に設計されましたが、その後継機である F-35 が米海軍に配備されるのは 2019 年になってからです」と Seneviratne 氏は述べています。「海軍では大量の F/A-18 が退役を控えており、これらの複合材構造の寿命を安全に延ばしたいと考えています。しかし、これらの老朽化した構造体がこの延長時間の使用にどれだけ耐えられるかは未知数です。それを探るのが今回の研究の目的です。」
MTS のソリューション
F/A-18 の老朽化した複合材コンポーネントや構造体の疲労試験を行うため、Seneviratne 氏とチームは、床置き型の一軸ロードフレームから、疲労評価された MTS アクチュエータを多数組み込んだフルスケールの多軸構造試験装置まで、様々な MTS 試験ソリューションを採用しています。これらのソリューションには、MTS の AeroPro™ コントローラおよびデータ収集ソフトウェア、MTS のデジタルコントローラ、MTS SilentFlo™ 油圧パワーユニットも組み込まれています。
F/A-18 ホーネットの翼構造は、複合材製の翼表皮と、複合材とチタンを翼付け根で接着したジョイントで構成されています。この接合部は翼を胴体に取り付ける高負荷領域です。この研究では当初、退役した F/A-18 の翼皮から採取した長さ 25 インチのドッグボーン試料片の評価に焦点を当てました。スペクトル負荷によるサイクル試験は実際の使用負荷を再現しており、チームは、各試料片の残留強度と疲労寿命のデータを元の認証データと比較して、ジョイントの残存寿命を判断することができました。
「複合材とチタンを接着したジョイントは、皆が考えていたよりもはるかに長い寿命を持つことがわかりました」と Seneviratne 氏は語っています。「 サービス履歴は各ジョイントの残留強度に大きな影響を与えませんでした。ジョイントには一般的に引張応力が主となる疲労スペクトルの下でさらに 5 回以上の疲労寿命が残されており、いくつかのジョイントは大きな強度劣化なしに 10 回の疲労寿命に耐えました。」
この結論を受けて、複合材スキンで構成される内翼の実物大構造試験がより大規模に実施されました。被験物質には F/A-18 の中央胴体、内翼、後縁フラップが含まれていました。第 1 段階の試験では、疲労による損傷を監視しながら、主翼構造に対してさらに耐用年数分の試験荷重をかけられました。第 2 試験段階では、継続的な疲労サイクル中のさまざまな種類の損傷をシミュレーションして、損傷の抑制と成長率 (存在する場合) を評価しました。
お客様のメリット
NIAR の研究における最も重要な成果は、米海軍が保有する F/A-18 の寿命延長の取り組みをサポートするために必要なデータ、特に内翼の先進的な複合材構造に関するデータの信頼性がはるかに高くなったことです。海軍や他の国軍の支部はこの方法論を他の老朽化したプラットフォームに適用することができます。
「制御された実験室環境で潜在的な問題を特定することで、航空隊全体の安全性を脅かす予期せぬ現象のリスクを軽減することができます」と Seneviratne 氏は述べています。「私たちの研究から得られたデータは、航空機の複合材部品や構造体の新しい設計に必要な情報となり改善にも役立ちます。」
MTS 試験ソリューションを使用することにより、Seneviratne 氏のチームはこの研究を安全かつ効率的に完了することができました。アクチュエータの応答とデジタル制御システムは、高価な被験物質と試験員の両方を保護する役割を果たしました。独立した圧力制御やその他の安全機能と組み合わされた MTS サーボバルブは動作速度が速いため、短時間で膨大な力を発揮する構造物試験装置のアクチュエーターを正確に管理することが容易になりました。
「信頼性も重要です」と Seneviratne 氏は付け加えます。「大きな構造物試験では、試験装置のメンテナンスのために試験を中断するたびに数万ドルのコストがかかります。MTS の試験ソリューションは非常に信頼性の高いものです。アクチュエーターをセットアップすれば、再調整の時まで止める必要がありません。それらを使用してこれまでに何万回もの疲労試験を行ってきましたが、投資対効果は非常に満足のいくものでした。」
Seneviratne 氏は AeroPro ソフトウェアの汎用性も高く評価しています。数百個のひずみゲージと数十個の制御チャンネルを使用する場合もある、非常に複雑な試験装置を物理的に再構成するという時間のかかるプロセスを経ることなく、研究者は様々な試験のセットアップと実行を容易に自動化することができます。それに加え、MTS は高品質なサービスと技術サポート、さらにはキャリブレーションや油圧システム設計などの付加価値サービスも提供しています。
「MTS には複雑な試験ソリューションの製造とサポートの経験があります」と Seneviratne 氏は締めくくりました。「彼らは私たちがより低コストで仕事ができるよう効率的なオペレーションをサポートする方法を知っています。ウィンウィンの関係です。」