お客様の挑戦
日産® は高品質で高性能な製品を求める消費者の要望に応えるべく努力しています。これらの要望にタイムリーに応えるためには、効果的に開発するだけでなく、コストと時間を消耗する 2 つの作業の繰り返しを避けるための効率的な検証が必要です。車両力学の目標を達成するためにはツールや手法を継続的に改善することが特に重要であり、エンジニアは車両に使用されているサブシステムの性能を開発の初期段階でより深く理解する能力を常に探しています。
コンピューター援用エンジニアリング (CAE) ツールを使用するとタイムリーな性能予測が可能になり、開発期間とコストが削減されますが、特定の制限があるため、これらのツールでは開発中の予期しないまたは未知の現象を明らかにすることができません。トラックに来るまでに想定外の現象を発見するのが遅れてしまうと、予算やスケジュールが影響を受ける危険があります。発見の遅れに伴う危険を回避する 1 つの方法は、開発時に物理的試験を使用して CAE を補完することです。これにより性能評価が改善され、プロトタイプの全体的な必要性が減り、コストの削減につながります。
日産自動車株式会社の自動車エンジニアたちは、デザイン開発の凍結から生産開始までを 1 年以内にしたいと考えていました。この目標を達成するためには、車両のサブシステムが動作する様子と互いの性能に与える影響を徹底的に理解することを含め、CAE および試験手順の補完的長所を強化する必要があります。このような積極的な開発タイムフレームに対応するためには、車両のプロトタイプが利用可能になる前にこのような知見を収集しておく必要があります。
当時、同社は新しいダンパーシステムの開発プロセスを進めており、このサブシステムをより精密に、開発のより早い段階で試験する方法の調査を計画していました。短い検討期間の後、日産は MTS との提携を決定しました。その理由の一つは、MTS が 40 年にわたり車両試験技術と専門知識において世界的なリーダーシップを発揮してきたことでした。
MTS のソリューション
MTS は日産と緊密に協力して、完全な車両プロトタイプが利用可能になる前に車両の性能評価が可能な、Mechanical Hardware-in-the-Loop™ (mHIL) 技術を導入しました。
MTS の mHIL 技術では、機械システムや構成部品をリアルタイムの車両モデルのループ内に配置することにより、電子コントローラユニット (ECU) の検証で広く使用される HIL (ハードウェアインザループ) 技術を拡張しています。mHIL 技術は実際の部品を使うため、CAE のみの場合よりも感度が高く、より効果的な開発決定につながります。また、エンジニアは mHIL 技術を使用してこれらの部品をバーチャル環境で動かすことができ、車両開発の非常に早い段階でトラブルシューティングを行い問題を回避することができます。この能力によりより強固なプロトタイプが得られ、最終的に効率が優れた検証および追跡作業が可能になります。
MTS と日産は、日産で開発中の新型ダンパーシステムの性能を検証するため、mHIL 技術を用いたパイロットプログラムを開始しました。このパイロット試験システムは最終的に、現在日産のエンジニアが使用している MTS 4 コーナーダンパー試験システムとなりました。パイロットの結果、試験データが、乗り心地とハンドリングの両方を分析するための実際の追跡試験と優れた相関関係を持っていることが明らかになりました。MTS の 4 コーナーダンパー試験システムを使用することで、日産は開発中の車両の後退的変更を 40% 削減しました。
お客様のメリット
日産は mHIL 技術を採用した MTS 4 コーナーダンパー試験システムにより、サブシステムの予期せぬ動作から生じる問題を、車両開発の初期段階で特定し解決することができます。この技術により、これまでプロトタイプをテストトラックで走らせなければ見えてこなかった予想外の現象が明らかになり、日産の時間とコストは大幅に削減されます。
「MTS の mHIL 技術により、QFD (品質機能開発) の未知の項目を準備段階で明らかにして解決することができ、車両試験期間を少なくとも 1 ヶ月短縮することができます」と日産のシステム実験開発の責任者である酒井洋一氏は語っています。「多くのメーカーは実験車両開発を縮小していますが、mHIL テクノロジーを使用すると、これらの開発を継続するための迅速、正確かつ手頃な手段を得ることができます。
「また、mHIL 技術を用いて効率化すると、より高品質なクルマをより手頃な価格で消費者に提供することができます」と酒井氏は付け加えました。
2008 年、mHIL 技術を用いた 4 コーナー減衰システムの共同開発が評価され、MTS と日産自動車株式会社は Vehicle Dynamics International 誌の「Development Tool of the Year Award」を受賞しました。
「mHIL 技術は、車両開発速度と費用効果の面での真の革命です」と酒井氏は述べています。「これは日産にとって非常に有益でした。サプライヤーにとっても同様に有益であることは間違いありません」