お客様の挑戦
世界では毎年 140 万件の外傷による脊椎損傷が発生しており1、そのうち 15% で外科手術が必要です2。このようなケースの多くは、人生の大半が残されている 10 代の若者であり、痛みを除去し可動性を回復させることが特に重要です。治癒時間も改善する必要があります。最近のアイルランドの研究によると、外傷性脊髄損傷の患者は、平均 46 日間の入院治療を必要とします。
タラ技術学院(ITT ダブリン)は、アイルランドの南ダブリンにある大学レベルの教育機関です。生体工学技術センター (BTC) は、ITT 工学部内で応用研究を行い、生体力学エンジニアリングの上級学位取得を目指す一握りの学生に集中的な指導を行っています。BTC は工学の原理を医療問題に応用し、患者の QOL (生活の質) を高めるために臨床現場で使用できる、新しいイノベーションを生み出すことを目標としています。
最近、BTC は広く使われている 2 つの 脊椎手術方法 (脊椎骨折安定化術とバルーンカイフォプラスティ) の最適化に応用研究の焦点を当てており、 外科医が最高の結果を出し、術後によく見られる合併症を最小限に抑えることができるようサポートしています。 このどちらも入院期間の短縮につながります。
脊椎骨折の安定化手術では、ネジやロッドを使って 脊椎の損傷部分を機械的に安定させます。バルーン椎体形成術では、膨らませたバルーンを使って倒れた椎骨の 高さを回復させた後、骨セメントを充填して構造を固定します。椎体形成術を受ける患者の多くは、手術後の治癒後に脊椎の隣接部位を骨折しています。
双方の施術を最適化することは、BTC にとって同じ課題です。研究者たち は人間の脊柱の生体内荷重とモーメントを正確に再現することで、 試験実験室環境で有意義な試験データを収集する方法を特定しなければなりません。
「極めて多くの未知を含んでいる複雑な機械系システム である脊椎は、興味深い研究領域です」と、 骨折安定化手法の研究を主導した大学院生の Colin Bright は語っています。「私たちの目標は、実際のシミュレーションからデータを収集し、 試験環境に適応させることで、骨折安定化とバルーン 椎体形成術における未知の部分を減らすことです」
MTS のソリューション
BTC では、MTS FlexTest® と MTS MultiPurpose TestWare® ソフトウェアを搭載した MTS モデル 858 Bionix® 試験装置を使用して、応用研究のイニシアチブをサポートしています。この油圧サーボシステムは、屈曲、伸展、側屈、ねじり、X 軸剪断、Z 軸剪断の 6 自由度で、脊柱試料片の幅広い動作を正確にシミュレーションできます。試験システムでの運動学シミュレーションの間、6 自由度を持つロードセルからの試験負荷データと角度変位トランスデューサからの試験変位データが得られます。
骨折安定化とバルーン椎体形成術の研究の両方で、サイズと構造の点で人間の脊椎
と似ています。MTS Bionix の試験システムは、まず両手の手術で一般的に治療される脊髄損傷を誘発するために使用されます。次に、それぞれの手順を試料片に施した後、一連の静的および機械疲労試験を行います。
脊椎骨折研究のために、チームはまず神経弓全体が不全になる荷重が加えられた際の椎骨の性能を静的に評価し、損傷で必要とされる力の量と骨のたわみを決定します。次に、長方形のロゼットパターンのストレインゲージを神経弓に取り付け、さまざまな荷重や運動を受けたときの主ひずみの方向と大きさを計算します。
椎体形成術の研究では、一連の圧縮型試験を行い、椎体の
剛性と強度を回復させる効果を評価します。この結果、脊椎固定術の必要性を最小化または排除できるという価値ある情報を外科医に提供し、更なる骨折を防止するための十分なサポートを続行します。
「これらの試験で集めているデータで、椎体形成術による治療の機械的な推測を分析するための有効な有限要素モデルの提供へ向けて順調に進んでいます」と椎体形成術の研究を指揮している大学院生の Philip Purcell は語っています。
お客様のメリット
BTC の創立者である Fiona McEvoy 博士によると、MTS Bionix 試験システムの簡潔さ、柔軟性、能力は、チームが脊椎運動学についての新しい見識を得るために不可欠であり、その多くが最終的には手術室で使用されたそうです。
McEvoy は「試験実験室で注意深く脊椎の動きを監督し、それらの動きと試験データの相互関係を証明することができることはめったにない能力であり、私たちが非常にユニークな施設である所以です。MTS のソフトウェアの操作感はとても直観的で、試験のセットアップがとても速いので、生徒は創造力を発揮し、さまざまな方向性を探索しています」と語っています。
アイルランドの脊椎研究者たちは、骨折安定化およびバルーン椎体形成術の研究の最終結果を待ち望んでいます。BTC は、ヨーロッパや他の地域の同業者と外科的技術革新を自由に共有するアイルランド中の脊椎外科医と緊密な協力関係を維持しているため、これらの研究の結果は、世界中に影響を与える可能性があるのです。
Philip Purcell は「脊椎の生体力学と骨折の安定化およびバルーン椎体形成術の後の変化をより深く理解することで、外科コミュニティは検証されたデータに基づいたて患者に個別化された施術を提供する方向へ前進しています」と語っています。「患者さんは、手術台の上で過ごす時間が短くなり、回復も早く、術後の合併症もはるかに少なくなります。これは生活の質を向上させるだけでなく、関係者全員にとって時間とお金の節約になります」