
お客様の挑戦
鹿島建設(以下、鹿島)は日本の大手ゼネコンで、高度な技術と専門知識、そして一流の技術研究施設を活用しています。鹿島は業界のリーダーとして、新しい建築技術や革新的な建設技術を開発・展開しています。
鹿島はかねてから、この振動台を日本や地震国の耐震技術向上のための重要な試験装置と考えていました。同社は 1975 年に最初の MTS 振動台を導入し、1991 年にはより大容量の振動台に変更しました。しかし、この振動台の性能は、今後予想される巨大地震や長周期地震に対応するには不十分であり、国の政策変更に伴う原子力発電所の耐震性向上を検討するには不十分であると考えられました。
2008 年、鹿島と MTS は、超高層ビルや原子力発電所などの重要な構造物の耐震性試験に必要な振動と力を増やすことを目的とした更新検討に着手しました。鹿島は、世界各地に設置された大型振動台の納入実績と、MTS と鹿島とのこれまでの良好な協力関係を考慮して、MTS を選定しました。
MTS のソリューション
鹿島は、最新の大型振動台に求められる特性・機能として、長周期地震を再現するための高精度制御、可搬重量の増加、振動量の増加を挙げました。これらを実現するために、MTS は 2 層構造からなる高性能な三次元振動台として大きな地震動を再現する「メイン振動台」と、超高層ビルなどの長周期構造物の反応に必要な振動数を追加する「長周期振動台」を提案しました。
これは最先端の多機能・高精度の振動台を作ることが目的でしたが、環境への配慮から既存の建物や 1991 年の振動台の浮き台を再利用しました。新型振動台の浮体は、旧型振動台のベース部品、空気バネ、ダンパーなどの上に構築されています。このようにして基礎を構築することで、敷地外に伝わる振動を抑え、周辺環境への影響を低減することができました。
お客様のメリット
2010 年に完成した「W-DECKER®」は、2011 年 3 月 11 日に発生した東北地方太平洋沖地震をはじめ、記録されているほぼすべての主要な地震を再現できる、世界で最も機能的な民間の大型振動台です。
「長周期振動台」は、3.11 後に震源地から遠く離れた大都市で起きた超高層ビルの大きな振動を再現し、検証したものです。さらに、建物の構造はそのままでも天井の損傷などの非構造部材に多くのダメージが発生していたため、「メイン振動台」を用いて天井崩壊のメカニズムを解明し、耐震対策の効果を検証しました。
「これまで世界には長周期地震動の実験装置がありませんでしたが、『W-DECKER』は長周期地震動による超高層ビルの上層階の振動を、ビルの中に入るだけで再現することができます」と、主任研究員の田上淳氏は語っています。「MTS 北米チームと MTS 日本チームが一丸となって素晴らしいサポートを提供してくれました。稼働率は常に 100% を超えていて、来年の試験契約のスケジュールもほぼ埋まっています」
MTS では、機器の稼働率を確保するために、定期的なメンテナンスプランを提供しています。予期せぬ停止時間を排除し、機器を最高の動作状態に保つことで、より正確な試験結果を得られます。
「これまでの地震対策は、既に起きた被害を教訓に新しい建物の設計にフィードバックすることで成立していました。首都圏に甚大な被害をもたらす長周期地震動はまだ発生していませんが、できるだけ早い段階で対策を練ることが求められています。私たちは『W-DECKER』を使って、耐震・制震・免震などの地震対策技術をさらに向上させ、常に進化・発展していくお客様のニーズに応えていくことを目指しています」(田上淳)