お客様の挑戦
宇宙航空研究開発機構 (JAXA) は最新航空宇宙研究の任務の一環として、航空機材料、部品、構造の品質向上やコスト削減のための革新的な技術および評価方法の開発を行っています。旅客機の場合、品質とは安全性を意味します。そのため、JAXA 民間輸送チームの航空プログラムグループは、コスト削減だけでなく、最高水準の耐久性、強度、信頼性を持つ製品を生み出す製造方法に絶対の自信を持っている必要があります。
燃料費の高騰や世界的な省エネ志向により、燃料消費量の少ない軽量航空機が強く求められています。しかし、この目的を達成するために採用される複合材部品や構造は、従来のアルミニウム製の同等品に比べて製造コストが高くなるのが一般的です。Yuichiri Aioki 博士と配下の複合材グループはこのジレンマの解消に着手しました。特に、チームは新しい製造技術である VaRTM (Vacuum-assisted Resin Transfer Molding) に着目し、低コスト複合材部品や構造体製造の可能性を探りました。その結果、革新的な樹脂注入プロセスにより、従来の製法に比べて重量が 20% 軽いだけでなく、コストも 20% 低い複合材部品を製造できることがわかりました。VaRTM を使用すると、オートクレーブを使用しないより合理的な片面成形を採用することで、一般的なオートクレーブ処理のプリプレグプロセスと比べて部品コストと重量が低減され、より少ない部品数で、より大きく、より複雑な複合構造を形成することができます。
低コスト生産プロセスとしての VaRTM の有効性を証明した後、Aioki 博士とチームは VaRTM プロセスによって得られた部品が、航空機が飛行中に経験する複雑な負荷に耐えられることを証明する必要がありました。このタスクの重要な要素には、機械的試験が含まれます。JAXA が選択したメカニカルテストソリューションは、必要とされる試験の要求に対応できる柔軟性と、実際のシミュレーションの多軸要求を満たすために必要な高レベルの制御能力を備えている必要があります。
JAXA は最終的に MTS との提携を選択しましたが、Aioki 博士によれば、その選択は簡単でした。博士は、「MTS は航空機部品のテストソリューションで実績のある技術リーダーです」と述べています。「この会社は正確に自信を持って当社のユニークなニーズを満たすのに必要な専門知識を持っています。」
MTS のソリューション
JAXA のメカニカルテストプログラムの目的は、VaRTM で作られた複合材部品を、急激な高度変化を含む実際の厳しいフライト条件にさらすことでした。このプログラムには、サブコンポーネントの疲労試験と、実物大の翼の静的試験が含まれていました。MTS は精密なデジタル制御、堅牢な負荷フレームとアクチュエータ、高度なアプリケーションソフトウェア、専門家によるサービスとサポートを提供することで、この目標を達成するよう JAXA を支援しました。
また、サブコンポーネントの疲労試験のために、MTS はワイドパネル試験片用の高荷重モデル 647.200 油圧グリップを搭載した、モデル 311.41 油圧サーボ式負荷フレーム (2500kN) の提供も行いました。このシステムには、汎用性の高い FlexTest® 40 デジタルコントローラと、多目的 TestWare® ソフトウェアを実行する PC が採用されています。
実物大の翼の静的試験装置には 4 台のコンパクトな MTS 油圧サーボアクチュエータが含まれ、大容量の FlexTest 200 デジタルコントローラーと AeroPro™ の制御およびデータ取得ソフトウェアを実行するクライアント PC で駆動しました。
高性能なハードウェアとソフトウェアに加えて、Aioki 博士は MTS の較正サービスとオンサイトトレーニングもチームの成功に欠かせないものであると評価しています。「MTS の較正サービスは実験データのトレースを可能にする点で重要でした。航空機のテストでは、テストデータのトレーサビリティーが厳しく規制されています。トレースできないデータは承認されません。」MTS のサポートについては、「疑問が生じると、試験をスケジュール通りに進めるために必要な回答やガイダンスを MTS の専門家がすぐに提供してくれました。」と付け加えました。
お客様のメリット
MTS のソリューションにより、航空機が飛行中に経験する実際の力に新しいプロセスで製造された複合材部品が耐えられることを、JAXA は迅速に自信を持って確認することができました。「厳格な性能評価を経て、VaRTM で製造された複合材が航空機の翼に適していることが証明されました」と Aioki 氏は語っています。「実物大の構造部品テストに関して MTS が深い経験を持っていることは明らかでした。我々が必要とするテストソリューションの作成に必要な知識を持っていました。」
MTS 社内の専門知識に加えて、Aioki 氏は MTS が主催するユーザーフォーラムやセミナーにも感謝しています。「MTS デバイスを使っている仲間とアイデアや最良事例を広く交換できることは、当社が研究を継続的に成功させるために役立ちます。」
「MTS のおかげで、日本企業が開発した旅客機の認証試験が間もなく開始されます」と Aioki 氏は締めくくりました。「乗客の安全性を損なうことなく、より軽量で燃費の良い民間航空機を製造するための、安全で費用対効果の高い新たな手段がまもなく世界に登場するでしょう。この成果を得るにはテスト装置の信頼性と MTS の専門家の指導が不可欠でした。」