MTS の研究開発エンジニアである Byron Saari 専門技術者は、材料特性評価のエキスパートであり、この分野で複数の特許を保有しています。今回のインタビューでは、エラストマー、ポリマー、形状記憶合金に焦点を当てている研究チームにとって不可欠な能力である動的機械分析(DMA)について、Saari 氏が語っています。
Q:動的機械分析とは?
A:動的機械分析(DMA)は、応力をひずみの関数として、または力を変位の関数として測定する動的特性評価技術です。これは、材料に正弦波のひずみを加え、その結果生じる応力を測定するものです。一般的に DMA では、ひずみの周波数や試験片の温度を変化させることもあり、動的機械熱分析(DMTA)として知られています。
Q:エラストマー材料の開発において、DMA が果たす役割とは?
A:DMA は、エラストマー、ポリマー、形状記憶合金などの特性や挙動の評価に非常に有効です。これらの材料はいずれもダンピング効果があり、より高い周波数での動作が重要となるアプリケーションで使用することができます。DMA は、研究者にダンピング効果を詳細に研究するためのツールを提供します。DMA によって研究者は材料の複素弾性率、貯蔵弾性率、損失弾性率、損失係数を計算することができます。DMA が活用されている分野の一つに、様々な産業で重要となる、軽量でありながら高性能を維持する部品のための新素材の開発があります。
Q:DMA にまつわる課題をいくつか説明してください。
A:高い周波数で動きや力を正確に測定することは非常に困難です。これらの周波数において、印加された変位と結果として生じた力との間の位相遅れを正確に測定する能力は、DMA の重要な側面です。位相遅れは、純粋な弾性材料と純粋な粘性材料を区別する場合に重要です。エラストマー、ポリマー、形状記憶合金などは、いずれも粘弾性特性を示すので、この 2 つの中間に位置します。
Q:MTS は研究者がこの課題に取り組むのをどのように支援していますか。
A: MTS DMA ソフトウェアパッケージは、特殊な動的補正技術により正確な位相測定を可能にします。力トランスデューサや運動トランスデューサ、コンディショニングエレクトロニクスの位相特性を測定し、これらの影響を補正するために独自の計算を行います。このパッケージでは、振幅だけでなく位相の動的応答特性も補正することができます。これは、様々なアプリケーションや産業における材料試験や動的特性評価に関する 30 年以上にわたる社内の専門知識を表しています。
Q:この DMA 機能を搭載しているシステムはどれですか?
A:MTS は 0.01 N までの分解能で 250 kN から 1.25 kN の荷重容量の、DMA に適した動的試験システムの幅広いポートフォリオを取り揃えております。より高荷重、高周波数のアプリケーションには、エラストマー試験用に特別に設計されたシステムを含む、当社の多くの油圧サーボ試験システムで DMA パッケージを利用できます。MTS Acumen® 試験システムは、広範な高忠実度の動的および静的試験を行う動電型試験装置で、DMA 試験にも適しています。動的機械熱分析(DMTA)に必要な場合は、オプションのチャンバーを利用できます。
Q:DMA 専用の試験システムを使うのが一般的ではないでしょうか?
A:はい、以前はそうでした。しかし、多くの研究者、特に大学の研究者は、少ない労力で多くのことをしなければならないという大きなプレッシャーにさらされています。また、すべてのタイプの試験に対応する試験システムを購入する予算がない場合もあります。MTS Acumen 試験システムによって、研究者は DMA 試験をはじめとするその他多くの試験をすべて 1 台のシステムで行うことができます。さらに、MTS Acumen 試験システムは、精密な力トランスデューサ、高剛性の構造、高解像度のデジタルエンコーダにより、より小さな力と非常に小さな変位を測定できるように設計されています。
Q:なぜシステムのダイナミックレンジが重要なのでしょうか?
A: 研究者がしばしば決定しなければならない重要な特性の 1 つは、材料が硬い「ガラス状態」から柔らかい「ゴム状態」へと遷移する際のガラス転移温度です。この試験では通常、ガラス状態の材料を測定し、制御された方法で温度を上昇させ、材料がゴム状態に遷移する際に頻繁に測定を行います。遷移が発生すると、応力・ひずみ率が 1000 倍に変化することもあります。それを正確に測定するためには、ハイダイナミックな変位・力トランスデューサと堅牢な制御システムが必要です。
Q:ソフトウェアには他にどのような DMA 機能がありますか?101
A:MTS DMA ソフトウェアは、WLF (Williams-Landel-Ferry) モデルに基づいて時間温度重ね合わせ (TTS) を行うことができます。このモデルにより、材料研究者はマスターカーブを作成することができます。マスターカーブは、より低い温度での試験を通じて、より高い周波数での材料の挙動を推定するために使用されます。
Q:DMA ソフトウェアはどのような業界で重宝されますか?
A:減衰を示すあらゆる材料の特性を評価するには不可欠であり、その用途に制限はありません。自動車部品、生体材料、土木工学などへの明らかな応用例が考えられます。しかし、材料研究の醍醐味はその多様性にあります。MTS は幅広いシステムを提供することで、材料研究者がほとんどどんなニーズにも対応した完全な DMA ソリューションを開発することを独自にサポートしています。
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